民藝を訪ねて
第三回 倉敷ガラス
倉敷ガラス
小谷栄次
KODANI Eiji
プロフィール
小谷栄次
対談
おかやま住宅工房 中川大
おかやま住宅工房
中川 大
NAKAGAWA Futoshi

04 変化を受け入れ新しいものを。

中川
中川 外村先生の一言があったからあの倉敷ガラスの青『小谷ブルー』ができたということになるんですよね。
小谷
小谷 親父にしたら、貧乏だったからできたって。ガラスって、膨張率が違って相性が合わなかったら、なんぼ混ぜても割れるんですよ。小さく割れたり、しっかり混ざらす温度差があったら、爆発するように割れるんです。

サントリーオールドのガラスとは相性が良くて、うちのためにあったようなものだね。うちのガラスとぴったり合って、色ができた。それはありがたかったですね。

神戸の展示会に出品したとき、「あの色、倉敷ガラスじゃない?」と、遠くから色を見つけて立ち寄ってくれたお客さんもいました。サントリーオールドがなくなってからはグリーンの色ガラスを作ってもらってます。外村先生のダメ出しがなかったら、何も残っていなかったかも。
中川
中川 面白い。そうだったんですね。ガラス以外のことで何か趣味は?
小谷
小谷 大学で写真を勉強していたんだけど、吹きガラスの仕事をやり出してからフィルムが買えなくて、カメラ全部死んじゃったんですよ。うちのかみさんはそこそこ使ってたので大丈夫だったんだけど、しまい込んだカメラは死んじゃうんですよね。
中川
中川 奥様もカメラを?
小谷
小谷 大学を卒業して勤めていた写真場で一緒にカメラマンとして働いていたんです。
中川
中川 写真を撮る感覚とガラス作品を作る感覚って、何か共通するところがあるんですか?
小谷
小谷 どうだろう。僕の写真はどちらかというと引き算で、いらん物を全部取っていく。かみさんはキノコをよく撮るんだけど、上から下までピントを合わせて図鑑に載っているようにきれいに撮る。僕のはピンポイントで「ここだけがきれい。」という撮り方。
中川
中川 さきほどガラスを吹く工程を見させてもらったとき、ガラスの玉に気持ちをフォーカスしないといけないから、すごく真剣な表情で。
小谷
小谷 普段は夕方から夜中にかけて仕事をするので炎がすごく燃えて見えるんだけど、今日は明るくて、これぐらいでいいかなと思ったら、夜と違ってガラスが溶けすぎてトロトロになって、一個失敗しちゃった。二個目は失敗できないと思って(笑)。修業時代、親父の仕事が終わった後に夜になってから作ってたからそういう目になってしまって。
中川
中川 仕事に入るまでのルーティンてあるんですか?
小谷
小谷 こうやって誰か来ることはあまりないので、ほぼ毎日一緒やね。大体同じぐらいに火を入れて、ガラスの調子を見ながらかかる時間を計って。大きかったら時間がかかるし。

夏になると、このあたりは『瀬戸の夕凪』といって、夕方五時ごろは風がピタッと止まって暑いじゃないですか。工房の中はものすごく暑いんですよ。だから少し風が吹き始める六時ごろから作り始めます。終わるのが夜中の12時ぐらい。その間に30個作る。

朝は七時ぐらいに起きるから、ちょうど三時ごろは昼寝の時間だね。もうそろそろ歳なんだから人間らしい生活をしてくださいと言われるんだけど、展示会前などは、やっぱり作らないとどんどん予定がずれてくるしね。
中川
中川 これからこういうものを作っていきたいとか、考えていらっしゃることはありますか?
小谷
小谷 親しくしている職人仲間から、ガラスのペーパーウエイトを作ってほしいって頼まれたんだけど・・・今までオブジェはほとんど作ってないんですよ。もう60歳になるから、あんまり足かせをせずに、オブジェを作ってみてもいいかなと思ってます。刺激がなかったらマンネリになりますよね。何でもいいんです。器でなくても何か美味いものを食べるとか、どこかへ行くとか。この先どうなるか、自分でもわからない。ちょっと変わりたいなという気持ちもあるので。
中川
中川 何か全然違う新しいものが生まれるかもしれない。楽しみですね。
小谷
小谷 そうそう、乞うご期待(笑)。
小谷
小谷 あと、僕は今まで作り手同士の交流はそんなにしてなかったんです。倉敷の作り手グループと子どものグループ活動はしているけど、それを始めるまでは自分の個展しかしたことがなかった。だからこの先はガラスだけでなく、ほかの作り手さんとの交流ができたらいいなと思って。

倉敷も、ものづくりネットワークを作って動こうとしているし、いろんな意味で考えないといけない時期かなとは思うね。
中川
中川 うれしい言葉が出てきましたね。では、この先を楽しみにしております。ありがとうございました。
【終わります】

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