本焼き板と漆喰のちから

わたしたちは瀬戸内の気候風土になじむ素材を大切にした家づくりを行っています。その中でも「本焼き板(ほんやきいた)」と「漆喰(しっくい)」を重宝するのには理由があります。

外壁材として優れ、岡山の気候風土になじむ「本焼き板」

「本焼き板」とは木材の表面を高温で焼き、炭化させた外装材です。本焼き板によく使われるのはスギの木ですが、中心付近の「赤身」部分は特に水に強く、八分~一寸程度の厚みがある板にして外壁や塀に使用すれば百年は持つと言われています。このスギの赤身を焼いて炭化させると表面が炭でコーティングされた状態になるため、さらに耐水性・耐久性が高まってもっと長持ちになるというわけです。このほか本焼き板には防虫・調湿効果もあり、一度焼いて炭にしてあるので燃えにくく腐りにくいという特長もあります。 全国的に見て、岡山には特に焼き板の家が多いことで知られています。岡山の海沿いの地域は、河川によって運ばれてきた堆積物でできた陸地をさらに干拓したものであり、肥沃で農業に適しているけれども水はけが悪く湿気の多い土地でした。そのため、焼き板は湿気の多いこの地で家を長持ちさせるために欠かせないものであり、いわば気候風土になじむ建築材料だったのです。 わたしたちが用いるのは、昔ながらの本焼き板。炭化層が格段に分厚く、焼き板本来の味わいや性質がより発揮されやすいので、あえて本焼き板を使い続けています。

調湿性にすぐれた古くからの防火材「漆喰」

「漆喰」とは石灰・のり・スサを混ぜ合わせて作る塗り壁材で、わが国の建築において外壁・内壁などに古来より使われてきました。原料が無機物であるため燃えることがなく、防火材としての役割を果たしていた漆喰。江戸時代に発展した土蔵造りでは、延焼を防いで貴重な財産を守るため、外壁を漆喰で覆っています。倉敷美観地区で見られるような、漆喰壁に瓦を組み合わせた「なまこ壁」も日本には数多く現存しています。 また漆喰の表面には微細な穴がたくさん開いています。その細かな穴に湿気や匂いのもとが吸着するので、梅雨の不快なベタベタ感や冬季の結露を軽減したり、いやな匂いを吸い取ったりといったような調湿性や消臭効果も期待できます。さらに、漆喰の主成分である石灰(炭酸カルシウム)は〝強アルカリ性〟なので、カビや細菌の発生・増殖を予防する防カビ・抗菌性もあるのです。 ただし漆喰自体は雨風に弱いので、外壁に使用する場合は定期的なメンテナンスが必要です。乾燥後は空気中の二酸化炭素と反応して、ゆっくりと原料である石灰岩に戻るため、建て替えなどで壁を崩してもまた原料として使えます。リサイクル性の高い、環境にやさしい建材だと言えるでしょう。